(2024/09/01)
2016年に東京大学と理化学研究所の研究グループから「カルシウムが眠りの長さを決める」という報告がありました。
マウスの実験で、カルシウムイオンを神経細胞に取り込めないようにすると、マウスの睡眠時間は正常マウスより顕著に短くなりました。逆に、カルシウムイオンの排出を弱くしたマウスは、正常マウスより長く眠ったそうです。
つまり、睡眠には脳の神経細胞内にカルシウムイオンを取り込むことがポイントです。ただ、レポートを読んだだけではカルシウムイオンを取り込む方法がわからず、時が過ぎて行きました。
最近、この論文の筆頭著者である東京大学の上田泰己教授のインタビュー記事を読んで、ポイントは「神経細胞の興奮」だとわかりました。
上田教授がすすめているのは「感動する」こと。「感動」とは神経細胞の興奮なので、神経細胞内にカルシウムイオンが多く入ってきます。それが引き金となって、ある酵素によって眠気の素がつくられるのだそうです。
つまり、日中に感動してカルシウムイオンを細胞内に取り込めれば、眠気の素がたくさん作られて、よく眠れるようになるというわけです。
映画を観たり、本を読んだり、学習したり、旅行に行って、新しい情報をインプットすることが、脳への新しい刺激=脳の興奮となります。
みなさんは最近、どんな感動がありましたか?
私は夏休みに熱海旅行へ行った時に、オーシャンビューの美しい景色に感動しました。温泉に入りながら青い空と海を眺めながら満たされた気持ちになりましたが、あのときも脳にカルシウムイオンが取り込まれていたのでしょう。
宿にあった拡大鏡を見たときも、新しい体験で興奮しました。LEDライト付きの5倍拡大鏡で、細部までよく見えるのです。最初は自分の顔のシミやシワに愕然としましたが、じーっと見ていたらマインドフルになり、ていねいにスキンケアとメイクをしている自分に感動しました。
また、上田教授のインタビュー記事を読んだこと自体が新しい発見につながって興奮したので、このときもカルシウムイオンが脳に流入したと思います。
運動も脳をよく使うので、神経細胞は興奮します。体を動かすための指示は、脳が出しているからです。運動習慣がある人は、睡眠の質が高いこともわかっています。体の疲労だけではなく、カルシウムイオンも関係しているのですね。
日常の中での手軽な感動は、自然を感じることだと思います。青空や夜空を見上げたり、木漏れ日を見たり、川のせせらぎに耳を澄ませたり。ささやかな感動の積み重ねが、夜のよい睡眠につながります。
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