(2024/05/01)
「人は誰でも一人一人違う。
誰ひとりとして同じ人はいないという意味で平等である」
これは映画「PERFECT DAYS」を企画・プロデュースした柳井康治さんのお父様が、かつて話した言葉として、映画のパンフレットに載っていました。
一人ひとりの違いを尊重すること、それが平等なのかと思いながら、私は「平等」について探求し始めました。
柳井氏は、映画の舞台になった渋谷区の公共トイレプロジェクトのプロデューサーでもあります。東京オリンピックのおもてなしプロジェクトの一環として、「誰もが使ってみたい公共トイレ」を著名なクリエイターの方々にデザインしてもらいました。
公共トイレの新たな価値を創出した一方、清掃やメンテナンスという課題が浮上してきたのだそう。家のトイレは毎日掃除しなくても汚れないのに、公共トイレは一日複数回掃除しても汚れてしまう。この負の行動連鎖を少しでも良い方向へ変えたいと、この映画を企画したそうです。
美しい芸術作品に出会うと、それが何か分からずとも感動することがある。そんな理屈を超えた感情は、きっと潜在意識に何かを植え付け、行動変容を引き起こす可能性がある。
トイレの建築的価値だけでなく、日々汚れていくトイレを毎日毎日清掃し続ける清掃員の奮闘に真の価値がある。アート(映画)の力を通じて、清掃員の皆さんへの感謝や敬意を表したい。
と柳井氏は述べています。
一般的にトイレの清掃員は、誰にでもできる仕事とみなされ、尊敬の対象になりにくい職業です。でも、主人公の自己に誠実で丁寧な仕事ぶりと、今ある環境の中に幸せを見い出す力。こんなふうに生きられたら最高だし、そんな彼に尊敬の念を抱きました。
そう、今ある環境や状況は平等でなくても、置かれた環境の中で自分はどう在るか、それを生み出す力は誰にでも平等に与えられています。
内的な自己を探求し、表現する人たちが増えることで、外的な社会構造も平等になっていくのだと思います。
そして睡眠は、誰にでも毎日、平等に訪れる時間です。日中に起きた出来事や得るものは違えど、意識がない時間という意味では、平等です。
その平等な時間をどう過ごすか、それが人の人生に平等に与えられた内的な質を左右するのだと思います。十分な睡眠で英気が養われることで、在りたい自分が表現しやすくなるからです。
映画の主人公、平山さんも規則正しく十分な睡眠をとっていました。当然のごとく、しかも自然に。肉体労働で日中に体をしっかり動かし、銭湯で温まって疲れを癒し、暗い部屋で読書灯をつけて文庫本を読みながら眠る。平山さんは、質のよい睡眠をとっているに違いありません。
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