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執筆者の写真三橋美穂

185. 今ここ、PERFECT DAYS

(2024/04/01)



先日、久しぶりに映画館で映画を観ました。

役所広司さん主演「PERFECT DAYS」

平山という名の公共トイレの清掃員が主人公です。



下町の古いアパートで独り暮らしをしている彼は、毎朝、近隣住人が道路を竹ぼうきで掃く音で目覚めます。布団をサッと畳んで部屋の片隅に置き、歯を磨いて髭を整え、植物に水をやり、作業着に着替えます。



部屋の中には、彼の好きな本とカセットテープが、棚の中に整然と収められています。ガラケーと小型のフィルムカメラと小銭をポケットに入れ、玄関を開けて空を見上げながら微笑む彼からは、新しい朝を迎える歓びが伝わってきました。



軽自動車に乗って仕事現場に到着すると、公共トイレの清掃を丁寧に誠実にキッチリと仕上げていきます。昼休みには神社のベンチでサンドイッチを食べ、楽しそうに空を見上げ、カメラで木漏れ日を撮影します。仕事を終えると自転車に乗って銭湯に行き、近所の居酒屋でお酒とつまみを食べ、布団の中で本を読みながら一日を終える。



同じルーティンを淡々と繰り返す映画なのですが、観終わって映画館の外に出たら、自分の体の感覚がいつもと違っているのに気づきました。エネルギーに満ちているのです。



音がクリアーに聞こえて、視線は真っすぐ。

視線の先にある文字が、ストレートに入ってきます。

心は軽やかで、穏やかさと歓びがある。

自分がマインドフルな状態にあることがわかりました。



マインドフルとは思考から離れ、今という時との内的な調和がある状態です。

自分が主人公の世界を再体験していることに驚きました。

言葉では言い表すことが難しいのですが、内的なトランスフォームが起きる、すごい映画でした。



彼が清掃員になった経緯は明かされていませんが、おそらくエリートでいい生活をしていた中での葛藤と挫折の末、今の暮らしを選択したのだと感じました。



傍から見ると決していい暮らしぶりとはいえませんが、自己に誠実に生きる平山さんの心は豊かで、彼の在り方に憧れさえ抱きました。



ほとんどの人たちが「あれが欲しい、これが欲しい」「もっとこうなりたい、ああなりたい」と焦燥感を駆り立てられています。「今ない」ことへの意識が、欲望を刺激しているのです。その不安やイライラのストレスは、睡眠にも悪影響を及ぼします。



ただ「今ある」こと、一つひとつに意識が向いていたら、満足と歓びがあるのだと、この映画を観て体感しました。



「PERFECT DAYS」おすすめです。

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