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執筆者の写真三橋美穂

183. 睡眠と人生とマインドフルネス

(2024/02/01)



薬を使わない不眠症の治療として「認知行動療法」が注目されています。睡眠に対する思い込みを是正し、一人ひとりに合った睡眠習慣を見つけていく方法です。睡眠薬ほど即効性はありませんが、不眠に対するさまざまな解決策を身につけられるため、効果が持続することが特長です。



具体的には、以下を組み合わせて行います。

・寝床にいる時間を減らして深く眠れるようにする(睡眠制限法)

・寝床と睡眠の関連付けを強くして眠れるようにする(刺激統制法)

・睡眠によい行動と環境を整える(睡眠衛生)

・不眠に関する有害な思い込みを和らげる(認知再構成)

・筋弛緩法などの簡単な体操(リラクゼーション) など



認知行動療法は、アメリカで不眠症の標準治療に位置付けられているほどですが、さまざまな要素を含むため、本当に効果があるのは何か、よくわかっていませんでした。そこで、東京大学や京都大学などの研究者たちが、241の臨床試験(3万人以上が参加)をメタ解析し、その結果が先日発表されました。



<有効性が示されたもの>

・睡眠制限法

・刺激統制法

・認知再構成

・マインドフルネス(不眠への不安を受け入れる)

・対面提供(セラピストが対面で治療する提供方法)


<有効性が示されなかったもの>

・睡眠環境を調整する睡眠衛生指導

・筋肉を意図的に弛緩させるなどのリラクゼーション法



これを見て、マインドフルネスは人生の効果を高める基礎なのだと再認識しました。



マインドフルネスとは「今」に意識を集中し、心・体・周囲に起こっていることに気づき、現実をあるがままに受け入れることです。過去の記憶や未来の不安に心を奪われて「心ここに在らず」の状態から抜け出し、今、この瞬間の体験に意識を向けて、とらわれのない状態で、ただ自分を観て、気づき、受け入れること。



「眠れなかったらどうしよう」と不安を感じたら、今、眠れないことが不安な自分がいるな、体が緊張しているな、という自分のあるがままを受け入れます。

すると不安の感情に振り回されていないことに気づくでしょう。



次に呼吸に意識を向けてみましょう。

息を吸うときに、ひんやりした空気が鼻の中を通り、そして鼻の奥で止まる。

息を吐きながら、温かい空気が鼻から出ていくことに意識を向けます。

自分が呼吸しているのではなく、自然が自分を通して呼吸しているとイメージすると、集中しやすいでしょう。

もし雑念がでてきたら「雑念があるな」とそのままにして、また呼吸に意識を戻します。

そして、呼吸を続けることで、身体の感覚が変化していくことに意識を向けましょう。



マインドフルネスは、以前からビジネスでも注目されていて、集中力や創造力を高めたり、ネガティブな感情をコントロールできるようになるなど、メンタルヘルスにも効果的です。



私が自然にマインドフルになるのは、植物の手入れとしているときと、お風呂に入っているときです。とくに入浴中は新しいアイディアがひらめきます。



講演中にマインドフルになっているときも多く、そのときは参加者も集中して聴いていて、会場全体でエネルギーの循環が起きていると感じます。

しばらく体がビリビリしている感覚があり、幸福感と充実感で満たされます。



心が「今ここ」にあること、その時間ができるだけ長く保てることが、人生と睡眠の質を高める秘訣です。


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