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執筆者の写真三橋美穂

163. 新しい生の始まり

(2022/06/01)



わが家には、7月に16歳を迎える2匹の猫がいます。

一緒に生まれた4匹の保護猫のうち、2匹を迎え入れました。

メスをミー、オスをケイと命名。

動物と暮らすのが初めての私は、最初は右往左往していましたが、次第になくてはならない存在になっていきました。



仕事で疲れて帰ってきても、玄関を開けると必ず猫たちが迎えに来てくれ、その姿を見るだけで「がんばってきてよかったなぁ」と癒されます。

そんな家族以上の存在であるケイの病気が先月わかり、気持ちのアップダウンが激しい1か月を過ごしました。



ある日、キッチンの上にいるケイを見たとき、目の上が赤くなっていることに気が付きました。長らく動物病院にかかっていなかったので、健康診断もかねて受診することに。そこで口腔内の腫瘍が見つかり、検査をしたところ扁平上皮癌と診断されたのです。



この病気は転移しやすいことが特徴で、一般的な余命は2~3ヶ月だと先生。

「えっ!こんなに元気なのに?!」

そのとき私は、ケイの死が迫っていることを受け入れられず、呆然としながら動物病院を後にしました。



猫の16歳は、人間でいうと80歳に相当します。

腎機能も低下しているので大きな手術はリスクが高く、年令的なことを考えると、このまま最期を待つしかないとのことでした。



何かいい方法はないかと思いを巡らせていたときに思いついたのは、ホメオパシー。自然療法の一種で、ケイは子どものころに発症した喘息をホメオパシーで治癒した過去があったのです。

ホメオパスという専門家を、私はインターネットで必死に探しました。

ケイに必要なレメディ(ホメオパシー治療薬)を購入し、今はそれを飲み水に入れて摂っています。



あまり水を飲まないことをホメオパスに相談したら、直接飲ませることを考えてほしいと言われました。

無理やり口を開けて飲ませることを試みましたが、嫌がる上にレメディを吐き出してしまいます。

そこで、少量の水で溶かした液体をシリンジ(針のない注射器)から飲ませてみました。嫌がりながらも、ある程度飲ませることができましたが、次第に私の顔を見ると逃げていくようになりました。



ケイに嫌な思いをさせてまで、レメディを摂らせる必要があるのだろうか?

そもそもケイは「長生きしたい」と思っているのか?

長く生きてほしいというのは、私のエゴではないか?

と自分に問いかけ、ケイが嫌がることはやめようと決めました。



飲み水を少ししか飲まなくて効果が薄くても、それでいい。

できるだけ痛みや苦しみがなく見送れたら、それでいい。

方向性が定まったら、気持ちが楽になりました。



動物も人間も今生で終わりではなく、次の転生があることを私たちは認識し始めています。

死は終わりではなく、新しい生の始まり。

一日でも長く一緒にいたいというのは、私の執着。

動物と暮らす幸せな体験を与えてもらったことを感謝しながら、ケイを見送りたいと思っています。



といっても、今はまだ元気ですけれど。

腫瘍の影響で右目にたまる、ケイの涙をティシュで吸い取りながら、幸せを感じている私がいます。

病気を通してケイとの関係性が変わってきて、一昨日は私のベッドの枕元でしばらく寝ていました。これまでには、なかったことです。



輪廻転生が当たり前の概念となって、死への恐怖がなくなったら、世界はもっと平安になるでしょう。

その時は、睡眠も深くなりそうですね!



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