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執筆者の写真三橋美穂

161. 睡眠のバロメータは日中にあり

(2022/04/01)



先月、ダンス指導者の方々に向けた、睡眠セミナーに登壇しました。2年前に開催される予定だったのですが、コロナ禍で中止になり、やっと念願かなっての開催でした。アクティブな60~70代女性が中心の明るい雰囲気の中、私も久々の対面セミナーで心地よいエネルギーの循環を感じました。



盛り上がりの中でセミナーを終え、質疑応答も活発でした。

その中から2つ、みなさんに役立ちそうな内容を紹介します。



<質問ー1>

スマートウォッチで毎日睡眠を計測しています。

深い眠りを増やすにはどうしたらいいですか?


<回答ー1>

計測結果を気にしすぎないこと。

深い睡眠が多ければいいというものでもない。

日中の体調や気分がよければOK!



睡眠に興味を持ち、質の高い睡眠が取りたいと思う事は素晴らしいことです。睡眠を意識することを「スリープコンシャス」と言い、睡眠を計測して客観的に見始めるだけでも、睡眠は良い方向へ改善されていくことがわかっています。



ただし、計測結果にとらわれすぎると逆効果。スマートウオッチは脳波計測と比べて精度が低く、スマホアプリはさらに精度が下がります。表示される結果が正しいとは限らないのです。



「深い睡眠の割合が多いほどよい」というのも間違った認識です。睡眠ステージを大きく分けると次の3つになり、通常、私たちが「深い睡眠」と呼ぶとき、3を指しています。


1、レム睡眠

2、浅いノンレム睡眠

3、深いノンレム睡眠



そして、それぞれの睡眠ステージに役割があり、記憶については下記の通りです。


1、レム睡眠

・頭で覚えた記憶(エピソード記憶)を定着させる

・思い出す作業がスムーズに出来るように、記憶に「索引」をつける


2、浅いノンレム睡眠

・体で覚えた記憶(手続き記憶)を定着させる


3、深いノンレム睡眠

・嫌な記憶を消去する



レム睡眠と浅いノンレム睡眠は睡眠後半に増えるので、睡眠時間が短すぎると削られてしまいます。深い睡眠だけでは記憶の定着ができないので、すべての睡眠をバランスよくとることが大切です。



最近、レム睡眠の科学的解明が進んでおり、重要な役割があることがわかってきています。

その一つが、脳の血流量。ノンレム睡眠中は覚醒時とほとんど差がありませんが、レム睡眠中には脳血流量は約2倍になるといいます。



レム睡眠中に脳の血流が増えることで、老廃物を排出したり、栄養を受け取るなどの物質交換を活発に行って、脳をリフレッシュしているというのです。また、レム睡眠の割合が少ない成人は、認知症や死亡リスクが高いという報告もされています。



ちなみに成人のレム睡眠の割合は、睡眠全体の20%程度が適切です。



深い睡眠を増やすことばかり気にしていると、本当に大切なことを見失います。そもそも、私たちがなぜ眠るのかと言えば、翌日を生き生きと過ごすため。ですから、睡眠の良し悪しの一番のバロメータは「日中の体調」なのです。



<質問ー2>

深夜までベッドの中で読書をしている友人によくない習慣だと伝えたいが、どう思いますか?


<回答ー2>

今はそのままにしておいた方がよい。

本人から困っている様子が伝わってきたときにアドバイスしましょう。



その友人も同年代(60~70代)とのことなので、日常生活に困っていなければ、あまり細かいことにこだわらない方が上手くいきます。高齢になって、教科書通りの理想的な睡眠をとることは難しいからです。年齢や環境に合わせて折り合いをつけていくことが大切です。



実は、質問者から伝わってきたのは「友人のことを想って伝えたい」というより、

「覚えた知識を伝えて、すごい人と思われたい」

「相手のよくないところを指摘して、自分が上に立ちたい」

という在り方でした。



もちろん、そのことは質問者の顕在意識には上がっていません。でも潜在意識からくる在り方は相手に伝わるので、「大きなお世話」になりかねません。質問者に、その友人が日常生活に困っているか確認したところ、困っていなかったので、「今は見守りましょう」と伝えました。



アドバイスをするときは、相手に想いを寄せ、共感がベースにあると効果的に伝わります。

ぜひ覚えておいてくださいね。



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