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執筆者の写真三橋美穂

64. 時間があって眠れない、時間がなくて眠らない

(2014/03/01)



先日、大雪の影響で、熊本から東京まで新幹線で戻ってきました。その理由は、翌日に神奈川県藤沢市でセミナーがあったからです。何とか東京にたどり着いたものの、翌日は雪の影響で首都圏の交通機関は麻痺。JRが止まっていたため、自宅がある荻窪から新宿へは地下鉄で移動し、そこから先は、唯一動いていた小田急線を乗り継いで、藤沢まで3時間かけて到着しました。

午前の部は中止になり、午後もかなりキャンセルが出ましたが、約10名の方が参加されました。あの大雪の中でも参加するくらいですから、興味や悩みが大きい方が多く、中でも印象的な70歳くらいの男性がいました。眠りに良いと言われることは色々やっているのに、何をどうやっても、眠れないといいます。

朝は太陽の光をしっかり浴びて、夕方に運動をし、入浴後にはリンパマッサージ。もちろん寝具にもこだわっていて、30万円以上する岩盤浴敷布団と、いくつ買ったかわからないほど数々の枕。何とか眠れるようになりたいと、切実に訴えています。

そこで私が、いつも何時に就寝して、何時に起床しているのか尋ねたところ、「夜10時に寝て、朝は6時に起きる」とのこと。寝床にいる時間が合計8時間になり、これが眠れない一番の原因になっていることがわかりました。

必要な睡眠時間は、加齢とともに短くなっていくのが普通です。現役時代は睡眠を削ってがんばって働いてきたので、時間に余裕ができたら存分に眠りたいと思っている人は多いのですが、残念ながら、その頃には長く眠れなくなっています。

睡眠改善指導を行う場合、睡眠日誌をつけてもらい、「実際に眠っている時間+30分」だけ、寝床にいるように指導するのが基本です。寝床に長くいすぎて睡眠が浅くなっているのを、短く圧縮することによって、眠りが深くなり、熟眠感が高まります。これを専門用語で、「睡眠圧をかける」と言います。

そして、ある程度眠れるようになった実感を持てたら、寝床にいる時間を30分ずつ長くしていき、ちょうどいい睡眠時間のところで固定します。 「寝床にいる時間が長すぎて眠れない」、とても単純なことですが、高齢者には意外と盲点になっているケースが多いのです。

逆の盲点は、「5秒で眠れる」と豪語して、熟睡していると思い込んでいる人たち。健康な睡眠は、入眠に10~20分かかるのが普通で、5秒で眠れるというのは、眠りに飢えている証拠。これを“睡眠不足症候群”といって、本人に自覚がないのが問題です。慢性的な日中の眠気や強い疲労感は、睡眠不足が原因であることが多いのです。

4時間半の睡眠が5日間続くと、うつ症状に近い脳機能低下が起こることもわかっています。つまり、不安感が強くなったり、ものごとをネガティブに捕えがちになるのです。これではパフォーマンスが下がるため、さらに時間がなくなって睡眠がとれなくなります。

睡眠不足は人間関係にも悪影響を及ぼします。ついイライラして、パートナーに八つ当たりしたことはありませんか?睡眠不足になると、カップルはけんかしやすく、なかなか仲直りができないという報告もあります。最近仕事でミスが多い、体調が悪い、周囲に当たってしまう、そんな心当たりがある人は、睡眠の優先度を上げてみてください。何はともあれ、まず眠りましょう!

体が軽く、気持ちは明るく、ひやめきやアイディアがあふれ、人にやさしくなれる。ただ眠るだけで、そんな自分になれたら、素晴らしいとと思いませんか。その可能性を秘めているのが睡眠です。睡眠不足症候群の人は、ぜひ今日からしっかり眠って人生を好転させましょう!!

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