(2021/01/01)
先日、神戸で行われたイベントに登壇しました。 薄曇りの寒い日で、新型コロナウイルスが感染拡大している中、果たして参加者は集まるのかと心配しながら、早朝の新幹線に乗って神戸へ向かいました。
会場は「HDC(ハウジング・デザイン・センター)神戸」という住まいづくりの総合施設。地下1階から地上8階までのフロアに、約50のショールームが集まっています。
イベントは地下1階にある、吹き抜けの広場で行われました。消毒と検温、余裕のある席の配置、そして私は大きなフェイスシールドをつけて登壇しました。始まってみると、席は後ろの方まで埋まっていました。
<タイトル> 『新しい時代を私らしく生きる ~すぐに実践できるとっておきの睡眠メソッド~』
前回のコラムでお伝えした、甲府市役所で行ったセミナー内容をブラッシュアップして臨みました。
2000年に一度の時代の転換期で過去が参考にならない今、私らしく生きるには、どいういう自分で在りたいか、「在り方」に焦点を当て続けることが、豊かな人生を育む秘訣という話からスタートしました。
起きた出来事に一喜一憂していたら、自分らしく生きることは難しいでしょう。何があったとしても、「この状況の今、どういう自分で在りたいか」を自分に問い続け、その自分を生きていたら、どうであっても人生を謳歌することができます。
そして、数日前に私自身に起こったある出来事を、在り方の例として話し始めたら、参加者の視線がグッと強くなるのを感じました。その出来事はこちらです。
まず、日曜日の夕方に、テレビ取材の打診がありました。 それは朝の情報番組で、急に冷え込んできたため、冬の睡眠法についてインタビューをしたいということでした。 放送は火曜日の朝。つまり撮影は翌日の月曜日に行う必要があります。その日は夕方まで仕事が入っていたので、午後7時から2時間かけて対応しました。急な依頼にも快く応えていた、その時の私の在り方は「オープンで親切な人」でした。
そして翌朝の放送をテレビで見ていたら、映ったのは何と一瞬!! 10秒くらいのコメントが終わると、次のシーンに切り替わってしまったのです。 「えぇぇぇぇーーーーー!!!!! これはないでしょう!!」 と私はガッカリして、「オープンで親切な私」は一瞬にして消え去りました。期待が裏切られたことにムカムカしている自分に気づき、深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、気を取り直して仕事を始めました。
しばらくすると、ディレクターからお詫びのメールが届きました。翌日に災害規模の大雪になる見込みになったので、そのことに時間を割く必要があり、あのような編集になったといいます。このメールに対して、どう返信したいか、私は自分に尋ねてみました。
すると、 「災害のことを放送するだけでなく、自然災害が増えている背景にある気候危機のことを、もっと報道して欲しいと伝えたい」 という想いが出てきました。
そのディレクターには、編集で短くなったことへの理解を伝えた上で、2カ月前のコラムで紹介した世界で起きている気候危機の実例を示し、環境活動家の谷口たかひささんの動画を添えて、メールを返信しました。その時、私の在り方は「地球の未来に立場を取っている人」でした。メールを送った後は、その自分を表現できた歓びで満たされていました。
日本での報道が少ない気候危機の実情を、私は多くの人に知ってもらいたいと思っています。そこで、この事例を今回のイベントでも使うことにしたのです。このことによって「地球の未来に立場を取る私」の存在は、より揺るぎないものになりました。
イベントでは、各自で「在りたい自分」を創った後、睡眠について話しました。睡眠不足になるとネガティブになって、在りたい自分を表現することが難しくなるのです。具体的な睡眠メソッドやエクササイズを交えて、60分のイベントを終えました。
実は終了したときには、参加者の手応えをあまり感じられませんでした。吹き抜けの会場で音が響くため、声量を抑え気味に話したことや、登壇者が会場を歩き回るのがNGだったこと、席の間隔が広くて参加者の熱量を感じにくかったことも影響していたと思います。
終了するときに、 「しばらく私は会場に残りますので、個別に相談したい人はどうぞ」とアナウンスしたら、なんと行列ができたのです!
「私も夫も忙しくて、とても7~8時間も睡眠はとれないです」という女性には、
「個人の努力だけでは難しいですよね。だから社会の仕組みを変えていく必要があるのです」
と伝えました。この言葉は腑に落ちたようです。
具体的な睡眠の相談以外にも、 「テレビで見ていたので、直接お話が聞けて感激です!」 「最近、嫌な出来事があったので、在り方の話がよかったです」 「睡眠を仕事にしたくて、ずっと憧れていました」 という声をいただき、とても嬉しかったです。
そして、列に並んでいる人の中に、私が12年前に出版した『ねこに教わる 快眠レッスン60』という、わが家の猫をモデルにしたイラストが特長の著書を持参している方がいて、「サインをください」と頼まれました。
「猫のブログで…」と、その方のハンドルネームを聞いたら、すぐにピンときました。その昔、猫ブログを通して交流していた方が、会いに来てくださったのです! 私は驚きと感動で、胸がいっぱいになりました。
14年前、わが家に2匹の保護猫を迎え入れたとき、あまりの可愛さに記録に残したいと思ってブログを始め、2年ほど続けていました。他の猫ブログもいろいろ見ていたのですが、その中にお姑さんと猫との暮らしをユーモラスに綴っているブログがありました。温かな愛が伝わってくる大好きなブログで、お互いにコメントをし合う間柄でした。
10年以上の空白期間があったにも関わらず、その方(Aさん)が会いに来てくださったのです! 胸が熱くなって涙が出そうなほどで、なぜこんなに感動するのか自分でもわからない、思考を超えた体験でした。
家に帰って玄関で出迎えてくれた猫たちに、 「今日ね、Aさんに会ったんだよ。あなたたちのことを小さい頃から知っている人だよ」 と報告したら、思わず涙が溢れてきました。 そして、その夜は歓びに満たされながら眠りにつきました。
振り返ってみると、他の方々の好意的な言葉への喜びは、感情レベルの反応(Happiness)で、Aさんとの体験は、内的に深い歓び(Joy)でした。
競争社会から共生社会へ移行し、誰もが愛や親しみを自然に表現できる社会になったら、こんな体験が日常的なことになるのかもしれません。
新型コロナウイルスによって、否応なく社会は変化せざるを得ない状況になっています。ステイホームの時間に、自分は何を大切にしたいのか、どんな暮らしがしたいのか、人生の価値をじっくり考える時間として過ごしていきたいと思っています。
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