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執筆者の写真三橋美穂

129. 70億の人々への思いやり

(2019/08/01)



ハーバード・ビジネス・レビューにダライ・ラマ法王のリーダーシップに対する考え方の、素晴らしい記事が載っていましたので、その一部を紹介します。

組織では毎日、人々がともに働いています。しかし、ともに働いていても、多くの人々は孤独とストレスを感じています。 私たちは社会的動物ですが、お互いへの責任感が欠けているのです。何が問題なのか、自問しなければなりません。 リーダーは物質的な繁栄と富の蓄積を強く重視することにより、思いやりといたわりという人間の基本的欲求を顧みなくなってしまったのです。 人類の一体性を大切にする姿勢と、同胞への利他的な関りを強めることは、長い目で見て、社会や組織、個人が繁栄するのに必要不可欠です。

記事では、蜂と人間の違いにも触れていて、蜂の世界には憲法も警察も道徳教育もないけれど、彼らは生き残るために力を合わせて働いている。かたや人間はどうだろうかと。

貧富の差、そしてCEOと従業員の格差は歴史上まれなほど広がっているとも述べており、これは日本でも深刻な問題です。日本では子どもの7人に1人が貧困で苦しんでいるのに、大企業の内部留保(利益の蓄積)は増える一方。500兆円を超えるといいます。

従業員に満足な給料を払わずに、安い法人税を払うと内部留保は増えます。すると株価は上がるので、儲かるのは株主です。一生懸命働いている従業員が大切にされず、お金を右から左に動かしているだけの投資家が豊かになるのは、今の金融経済システムが根本的に間違っているのだと思います。

ダライ・ラマ法王は「恐れや不安は、容易に暴力に変わる」とも述べていて、最近、多発している悲惨な事件の根底にあるのは、不平等な社会、思いやりのない社会への不満なのではないでしょうか。

また、フランシスコ教皇が今年の6月に答えたインタビューでは、このように述べています。

私たちは、政治家が中傷や名誉棄損、スキャンダルを使って運動しないよう、助けてあげなければなりません。政治家は憎悪と恐怖を広めるべきではありません。希望だけを広めるべきです。

不安や恐れ、憎悪や恐怖は交感神経を刺激し、睡眠の質を低下させます。

ダライ・ラマ法王は「世界は感情の危機に直面している」と表現していますが、わたしたちができることとして、以下の3つを挙げています。

1、マインドフルである 怒りや執着といった破壊的な感情は、知性を働かせる力を鈍らせます。 「今、ここ」に集中し、平穏な心を培いましょう。 2、無私である 他者を真摯に気遣い、正直で、誠実で、率直な行動をとりましょう。 3、思いやりを持つ 幸せな人生をもたらす究極の源泉は、思いやりです。全人類70億人に思いやりを広げましょう。

眠りにつくときには、呼吸と体の感覚に意識を向けて、「今、ここ」に集中しましょう。そして、世界に思いやりを広げてみましょう。そのあなたは、すでに無私になっています。

他者を真摯に気遣える優しいあなたが表現されたなら、その日の夜は満足の中で眠りにつくことができるでしょう。

そして、ダライ・ラマ法王はこうも述べています。

平和とは、危険がなく心乱されないことでもあります。 それは、私たちが穏やかな心を持てるかどうかと関係しています。 私たちは同じグローバル経済の参加者として、互いに影響し合っています。さらに人間である私たちは、肉体的にも精神的にも感情的にもつながっています。

ぐっすり眠れば、気持ちに余裕が生まれて、他者への思いやりや気遣いが自然にできるようになります。睡眠から生まれる一人ひとりの心の平安が、世界の平和へとつながっていくことを願っています。

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