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執筆者の写真三橋美穂

127. 夏の快眠法 ~温熱環境は6要素で決まる!~

(2019/06/01)



寝室づくりには、温度、湿度、音、光、空気、寝具などが影響しますが、夏の睡眠に最も重要なポイントは、ズバリ寝床の中の温熱環境(ちょうどよい温かさ)を整えることにあります。

夏は蒸し暑さで睡眠の質が下がるため、一年の中で最も取材依頼が多くなります。決まって聞かれるのは、エアコンの使い方。設定温度は何度がベストかということです。これは体質や使っている寝具、パジャマ等にもよるので、一概にこれがベストとは言い切れるものではありません。取材では、シンプルな回答を求められるので苦慮してきましたが、6つの要素に分けることで整理することができました。

まず前提として、寝床内の快適な温湿度は一年を通して同じで、「温度33℃±1℃、湿度50%±5℃」です。私たちが布団の中で「気持ちいいな」と感じるときは、たいていこの温湿度になっています。

寝床内のちょうどよい温かさ(温熱)を保ち、体温をコントロールすることは、睡眠の質に直結します。でも、部屋の温度だけで寝床内のベストな温熱環境が決まるわけではありません。次の6つの要素が影響し合い、トータルで考える必要があるからです。

1、【温度】夏は28℃以下に。それ以上になると、熱中症リスクが高まります。

2、【湿度】40~60%がベスト。湿度が下がると涼しく感じます。

3、【気流】微風があると涼しく感じます。風が強いと体に負担がかかるので避けて。

4、【寝具】夏は熱がこもらない寝具を選んで。とくに通気性のよい敷きパッドが◎。

5、【着衣量】パジャマの素材や形状、肌着の有無で温かさが変わります。

6、【体質】同じ環境でも筋肉量が多い人は暑く感じ、少ない人は寒く感じます。

では、考え方の例を挙げてみましょう。

<A> 冷房でしっかり部屋を冷やし、厚い布団をかけて寝る(ホテル様式)

<B> 冷房を適度に使い、寝具と着衣量で調整する

<C> 冷房を使わず、寝具と着衣を薄くして、扇風機で気流をつくる

一番避けたいのは<C>です。「冷房は体がだるくなるから苦手」と、寝室が30℃を超えているのに扇風機だけで乗り切ろうとするのは危険。睡眠中に熱中症を起こすリスクが高いからです。逆転の発想で、着衣量を増やして冷房を使いましょう。

私は極度の冷え性のため冷房が苦手で、以前は29℃に設定していました。しかし昨年は「命にかかわる」猛暑で、睡眠中の熱中症にも警鐘が鳴らされ、室温28℃以下が推奨されていました。そこで、28℃でちょうどいい着衣量に調整したところ、「長そで・長ズボンのパジャマ」+「肌着」+「腹巻き」+ 「レッグウォーマー」というスタイルになりました。それにガーゼケットをかけて寝ています。

この話をすると暑そうだと驚かれますが、この寝方は思いのほか私に合っていて、熟睡感がアップしました。「体の近くで保温した方がぐっすり眠れる」ことに気づいたのです。睡眠中にガーゼケットが外れても寝冷えをすることがなく、昨夏は今までで一番よい睡眠が得られました。

「冷房を使うと体がだるくなる」というのは、冷えによるものです。睡眠中は体温調整するための反射機能が低下しているので、「寒い」と思った時には、もうすっかり体は冷えています。寝ている間に無意識に上掛けを外してしまうのは防ぎようがないので、着衣量を増やすことで対策しましょう。

ちなみに、睡眠中に足がつることの一因も「冷え」にあります。気温や体温が下がった明け方につりやすいので、短パンではなく長ズボンをはいたり、レッグウォーマーを着用して、ふくらはぎを保温しましょう。どれくらい着衣量を増やすかは人によって違うので、6つの要素のバランスを見ながら、自分のベストを見つけてください。

同じ寝室に夫婦で寝ていて、夫が暑がり、妻が寒がりという場合、夫の掛け寝具を薄くする、もしくは着衣量を減らす、あるいは妻の掛け寝具を厚くする、または着衣量を増やすといった方法を取り入れてみてください。バランスがとれて、お互い快適に眠ることができます。

冷房をつけると寒い、消すと暑くて目が覚めるという人は、エアコンを2段階で設定してみましょう。まず、就寝1時間前に設定温度25℃程度でスイッチオン。昼間の太陽光の熱が壁や天井にこもっているので、あらかじめ寝室を冷やします。寝始めは部屋が涼しくて気持ちいいと感じられると、体温が下がって寝つきがよくなります。

そして、寝るときに設定温度を26~28℃に変更しましょう。室温はすぐに上昇するのではなく、その温度になるまでは送風運転でゆっくり上昇していきます。体温が下がったころには室温が上がっているので、冷えすぎる心配がありません。

タイマーで冷房を切れるようにすると、室温が上がって目が覚めてしまうので、熱帯夜には朝まで冷房をつけておいたほうが、一晩中安定して眠ることができます。

そのほか、夏だからといってシャワーですませず、入浴をして体温のメリハリをつけたほうが、睡眠は深くなります。アルコール、タバコ、カフェイン、ブルーライトも睡眠の質を下げるので、控えめにしてください。日中も暑さで体力を消耗するので、昼下がりの短時間仮眠をとりいれながら、暑い夏を乗り切っていきましょう。

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