(2017/11/01)
先日、取材でお会いした女性から、こんな言葉を聞きました。 「お風呂でキャンドルを眺めていると、すごく癒されます」と。 私はとても興味をもちました。いつもは浴室の照明をつけないで、ドア越しの脱衣所の控えめな灯りで入浴しているので、さらに暗いキャンドルだけの入浴はよさそうに思いました。
早速デパートで購入し、リビングで灯をつけてみると、キャンドルの炎のゆらめきを見ているだけで、心が静まっていくのがわかりました。そしてバスルームでも使ってみると、とってもいい! お風呂の温熱作用と浮力作用が加わり、リラックスの相乗効果を感じました。
キャンドルがリラックスをもたらす理由の一つ目は、炎のゆらめきにあります。専門的には「1/f(エフブンノイチ)ゆらぎ」と呼ばれるもので、波の音や川のせせらぎ、虫の音、雨の音、そよ風、星の瞬きなど、適度な意外性と規則性がバランスよく調和したゆらぎのことです。これが人に快適性や癒しを与えると言われています。
人間の生体リズム(体温変化、心拍、目の動きなど)も「1/fゆらぎ」を持つため、同じリズムを持つ炎のゆらぎに共振して、心地よく安らげるのでしょう。
リラックスをもたらす二つ目の理由は、温かみのある色とほのかな明るさです。人間の体は、灯りの色や明るさに反応して、リラックスしたり活動的になったりします。色は色温度で表され、ケルビンという単位を使います。赤っぽい暖色(電球色)の色温度は低く、副交感神経を働かせ人をリラックスに導きます。青っぽい寒色(蛍光色)の色温度は高く、交感神経を刺激して活動モードに導きます。
灯りには明るさ(照度)もあって、これはルクスという単位を使います。 照度が低いほうがリラックスでき、キャンドルの照度は10ルクス程度です。照度と色温度がともに低く、1/fゆらぎもあるキャンドルは、視覚からリラックスを導く最高のアイテムではないでしょうか。
入浴しながらキャンドルを眺めていて気づいたのは、自然にマインドフルネス状態になっていることでした。「今、ここ」に意識を集中していると、思考が鎮まって頭が静かになり、五感が敏感になっていきます。
以前イギリスに住んでいた時、暖炉の炎をずっと眺めていても飽きませんでした。キャンプファイヤーの炎でも、同じ体験を思い出しませんか? 1/fゆらぎがあると、意識を集中しやすいのだと思います。いつも頭がいろいろな思考で騒がしい現代の生活の中で、意図的に頭の静けさを自分にプレゼントすることは、最高の癒しの時間。
さらに先日、夕食のときに照明を消して、キャンドル一つを灯したところ、食事の匂いや舌ざわり、箸や器に触れる皮膚感覚が敏感になっていました。周りが真っ暗で、視覚の働きが弱くなると、ほかの感覚器官の働きが際立ち、マインドフルネス状態になって、とても癒されました。
視覚も目の前に見えるものだけに自然に集中するので、お箸で持ち上げた白菜の向こうにキャンドルの炎がゆらめいたのを見たとき、とても幻想的で感動しました。その体験の後は、照明をつけようと思わなかったので、キャンドルだけで過ごし、心穏やかに早めに就寝しました。もちろんスマホを触ることもありませんでした。
昼は集中して仕事に励み、夜になったらキャンドルでスローダウンする。 一日中、交感神経がフル稼働しがちな現代の私たちに必要な、豊かな過ごし方だと思います。
やってみたくなりませんか?
キャンドルの器は、透明の耐熱ガラス製がおすすめです。どの角度からでも炎を眺められますから。お気に入りのキャンドルを見つけるところから、始めてみてください。
Comments