(2009/09/01)
最近、日本の睡眠研究の先駆者、東京医科歯科大学名誉教授井上昌次郎先生の近著「眠る秘訣」(朝日新書)を読みました。氾濫する睡眠情報に惑わされている人たちに向けて、睡眠の最も本質的・根源的なところから、科学的に睡眠とうまくつきあう秘訣について書かれています。
文中の、睡眠の起源についての記述を読んだとき、私はとても感銘をうけました。「私たちが生れてくる過程で、眠りはいつ・どこで・どのように芽生えるのか?」という問いに対して、その過程をたどっていくと、こうなるといいます。
まず、受精の瞬間には、睡眠も覚醒もありません。活発に細胞分裂を重ねて、中枢神経や内臓ができて行く途中の胎児であっても、大脳が存在しないうちは睡眠も覚醒もないそうです。私たちの生命活動は、睡眠も覚醒も「無」の状態から始まり、大脳ができてまずレム睡眠(胎児の場合は動睡眠と呼ぶ)が現れ、この眠りが大脳の機能を発達させて、意識を覚醒の状態へ導くのだといいます。
私たちは普通、覚醒の後に睡眠が続くと考えています。覚醒中の活動によって疲れた結果、睡眠をとるのだと。しかし起源をさかのぼると、睡眠が先にあって、その後に覚醒が続くのです。まさに、目覚めるために眠りがあったのです!
ここを読んだとき、私が普段から考えていることと重なって、「すごい!」とうれしくなりました。
それが何かというと、
「覚醒時にただ肉体が活動しているだけの状態が、人生に目覚めていると、言えるのだろうか? 」ということです。
今の自分にあった睡眠をとり、昼間の活動と同じくらいに睡眠を大切にし、眠りを通して自分自身を大切に扱っている私たちがいるとき、本当に「人生に目覚めている」のだと思っているからです。
夜の睡眠が昼の活動に反映され、 昼の活動が夜の睡眠に反映される。
人生は夜の睡眠と昼の活動の繰り返し。そして、その人生は睡眠から始まっているのです。
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