アクエリアス時代の新しい眠り

記事一覧

83. ぐっすり眠れる人は、認知症にならない (2015/10/01)

忙しくて十分な睡眠時間をとれない、
時間はあって存分に寝たいのに眠つきが悪い、
眠りが浅い、寝ても疲れがとれないなど、
私はこの20年の間に、眠りに悩んでいる沢山の方々の
話を聞いてきました。


睡眠不足になると、日中に頭がボンヤリしたり
倦怠感があるだけでなく、高血圧、糖尿病、うつ、
がん、脳卒中などの病気にかかりやすいことが
実証されています。さらにここ数年で、認知症のリスクも
高まることがわかってきました。


認知症と睡眠が関係しているとは、意外に思う
かもしれません。

しかし、よく考えてみてください。

日中フル稼働している大脳は、眠らない限り
休むことができません。ものごとを考えたり、
状況に合わせて判断したり、感情をコントロールしたり、
また手足を動かすのも、すべて脳の指令によるものです。


健康な人でも睡眠不足のときは、集中力や記憶力、
判断力、意欲が低下し、もの忘れや事故が起こりやすく
なります。これらはまさに認知症の症状に合致します。
脳のメンテナンスが不十分な状態が続けば、認知症に
なるのも当たり前のことです。


基本的なことですが、認知症とは、脳の細胞が死んで
しまったり、働きが悪くなることによって起こる病気です。


認知症の種類はたくさんありますが、約6割が
「アルツハイマー型認知症」で、約2割が脳梗塞や脳卒中などの
脳の血管の病気によって引き起される「脳血管性認知症」です。


アルツハイマー型認知症の原因は、健康な脳なら排出される
はずの老廃物である、アミロイドβやタウタンパクなどの
異常なタンパク質が脳にたまり、脳の神経が壊れて徐々に
萎縮していくことだと考えられています。


この脳の老廃物を捨てる特別なシステム=脳のゴミ出しは
睡眠中に行われていることがわかってきたのです。


先日、私が司会を務めた「秋の睡眠の日」東京地区の
市民公開講座でも、「睡眠と認知症」がテーマでした。


その中で印象的だったのは、睡眠健康機構長を務める
大川匡子先生の発表で、アミロイドβは認知症発症の
20~30年前から貯まり始めるらしいということです。


まだ断定できる段階ではないそうですが、40代くらいから、
睡眠不足になると急激に貯まり始めるようです。


睡眠時間別の脳内画像を見ましたが、6時間以下の睡眠では、
明らかにアミロイドβの沈着が進んでいる様子がわかりました。
将来、認知症になるかどうかは、40代からの睡眠習慣が
キーポイントになることを覚えておいてください。


なぜ、睡眠中に脳のゴミ出しが行われるのかといえば、
睡眠中に体液の流れが変わり、ゴミ出しの通路ができる
からです。


脳には老廃物を運ぶリンパ管がないのですが、
リンパ管の代わりをする「脳脊髄液」が、脳のゴミを
素早く出せるように、睡眠に入ると脳細胞が縮んで、
その通り道をつくっています。


ハーバード大学医学大学院、チャールズ・チェイスラー氏は
こう述べています。

「覚醒時の脳は、車であふれるマンハッタンの昼間の道路の
 ような状態だ。ゴミ収集車がゴミを運ぼうにも効率的に動けない。
 覚醒時のゴミ収集の効率は、睡眠時のたった5%だ。」


私は脳内の流れが変わる動画を、NHK(Eテレ)の
『スーパープレゼンテーション』という番組で観ました。


発表していた神経科学者のジェフ・イリフ氏は、

「脳内に満たされている脳脊髄液は、組織の奥深くまで
 張り巡らされている『血管の外壁』を利用して、老廃物を
 回収する。

 家のキッチンを1カ月間も片づけなかったら、ゴミや汚れがたまり、
 機能しなくなるのと同様に、もし、脳内の清掃を怠り続けたら、
 取り返しがつかない。なぜなら、脳のクリーニングは、脳と体の
 健康と機能を大きく左右するからだ。

 今後、脳疾患を予防していくためには、睡眠をおろそかに
 しないことが重要だ」 と述べています。


認知症の発症に関係すると考えられるのは、睡眠時間だけ
ではなく、睡眠の質とも関係しています。


米国・ワシントン大学の研究グループによると、
すでにアミロイドβ(脳のゴミ)の濃度が高い人たちは、
ベッドに寝ているわりには眠れている時間が短い、
つまり睡眠効率が悪かったそうです。


そして、最も睡眠効率が悪かった人は、睡眠の質がよい人の
5倍以上、初期のアルツハイマー型認知症を発症する可能性が
高いと報告されています。


つまり、覚醒している間の脳はフル稼働していて、その間に
脳にはゴミがたまる。そのゴミを掃除するのは、睡眠中。
睡眠時間が短すぎたり、眠りの質が悪いと、脳のゴミが
蓄積していき、認知症になりやすいということです。


さらに詳しいことや、よく眠るための方法は、10月16日発売の
『脳が若返る快眠の技術』(KADOKAWA)を、ぜひ読んで
みてください。


あなたの脳が、いつまでもイキイキと健康でありますように!